はずしたくない

 

こんな事がありました。

 

なかなか上手くいかないフレーズ。
「そのフレーズを吹くときにどんな事を思っているの?」と聞くと「音をはずしたくない、はずれたらどうしようと思って」と教えてくれました。「はずれる」とは自分の意図しない音が出てしまう、または音が出ない状態です。

 

とても真面目に練習に取り組む生徒さんです。もちろん頭の中で歌ったり、息を上に流すといった事も思っています。それでも「はずしたくない」が最優先、1番に思っているのです。

 

「はずしたくない」と思っているという事は、まず1番最初に「はずれる」「はずれるかも」と思っている場合があります。そうでなくては「はずしたくない」と思う必要はないですよね。

 

楽器を吹く、音楽を奏でる事の意味の一つに、自分の内から外に向かって心を込めて発信し、聴いてくれる方の心を揺さぶるという事があると思います。

 

聴いている方が何に心を揺さぶられるのか?どんな風に揺さぶられるのか?何を感じているのか?それは分かりません。私達はただ心を込めて発信するだけです。

 

その時に「〜したくない」と思って吹くのはどうでしょうか?

 

正直に言って、私も「はずし」たくはありません。

 

聞いてみました。

「はずしたくない」ということは上手く吹きたいという事だよね?

 

うなずいてくれました。

「はずしたくない」と思っていてもいいんだよ。でも、そう思う事は上手く吹く事に繋がるかな?そう思ってもいいから、どんな事を思って吹いたら上手くいきそうか言ってごらん。

 

真剣に練習している生徒さんです。次々と出てきます。どうしたら上手くいくのか?その為の知識や経験は十分に持っているのです。

 

持っていないものがあるとすれば、もしかしたらそれは「自分を許してあげる心」なのかもしれません。

 

「はずしたくない」という気持ちがあっていいよ。あってもいいんだ。僕だってあるさ。みんなあるんだ。その気持ちを3番目4番目にして、上手くいきそうな方法を1番目2番目に思ってみようよ。音楽を強く想って試してみようよ。さあ思って吹いてみて!

 

今日はどうだったかな?そう思えたかな?
大丈夫ですよ。あなたがそう思えるように私がいるのです。